こんにちは、フリーのナレーター・声優として活動しているゆうきです。
はじめて朗読に挑戦するときって、なかなか上手に読めてる実感がなくて悩ましいものですよね?
「なんだか棒読みになってしまう…」「ぎこちない…」「読み間違えてしまう…」などなど、最初はなかなかうまくできないもので苦戦する人も多いはず。
ですが、それぞれあるポイントに気をつけるだけで朗読が劇的に改善できるコツがあるのをご存知でしょうか?
今回は、過去に僕自身が取り組んできた朗読上達のポイントを詳しくご紹介していきます。
朗読をはじめる前の「本の読み方」、発声・滑舌・表現を磨くおすすめの「実践方法」など、確実に改善できるメニューを集めたのでぜひ参考にして取り組んでいただけたら嬉しいです!
朗読が上達する「本の読み方」
作品が決まったらさっそく声に出して練習!といきたいところですが、まずは、朗読の最初のステップとして「その作品を理解する」ことが大切です。
朗読までには、分解・考察・組み立ての3つの下準備が必要です。最初にしっかりと作品を読み込んで分解、次にそれぞれの事柄を具体的に考察し、最後にどう表現すべきかを練りつつ声に出して練習という組み立ての作業になるので、まずはこの土台を固める作業からはじめていきましょう!
分解
最初は、作品を読み込んでいくことから。
このときにおすすめなのは、なんとな〜く読み進めるのではなく様々な視点で繰り返し読んでみることです。
例えば、以下のように一つずつテーマを決めて読んでいくと、その作品の違った側面をみることができ毎回新しい発見があるはず。
- 作品から伝えたいこと
- 作品の魅力
- 時代背景
- 各登場人物の役割
短い作品なら何度も読み返しやすいので、「作品の魅力ってなんだろう?」「この文章にはどんな意味があるんだろう?」など。クスッと笑える作品なら「笑い」、泣ける作品なら「感動」といったポイントを探して読んでみるのもおすすめです。
テーマは広く、読み込みは深くを意識しながらはじめてみてください!
考察
ポイント別に読み込んでみたら、それぞれのテーマで気づいたことを書き出してみましょう。
こうすることで、バックボーンを理解したり、起承転結の構成、また、朗読の際にどのように表現すべきか?といった組み立てもしやすくなるはずです。
特に、作品の魅力や作品を通じて伝えたいことをまとめておくことはとても大事なポイントで、どんなに上手く朗読しようともココが抜けてしまってはただの自己満足になっちゃいます。
もちろん、作品の受け取り方は人それぞれなので、自分が伝えたい答えが見つかればOKです!
組み立て
作品の中身がわかったところで、各ブロックや文章、さらには言葉の一つ一つをどう表現すればそれらを上手く伝えられるかを考えていきます。
そして、具体的なイメージが固まったらいよいよ声に出して読んでみましょう!
このときに、自分の朗読をボイスレコーダーなどで録音し聴き返すと良かった点や気になる点がわかりやすいのでおすすめ。
詳しい実践のコツについては後述していくので、ここまでのステップを芥川龍之介の『蜜柑』を例に紹介していきますね。
『蜜柑』芥川 龍之介
- 発表:大正8年5月
- 人物:私(都会に住む男)、田舎者の小娘
- 舞台:横須賀発の上り二等客車内
- 魅力:心の変化、繊細な心理・風景描写
- メッセージ:あたたかい気持ち
大正8年5月に芥川龍之介によって発表された『蜜柑』は、横須賀から東京へ向かう列車の中での物語で、実際に作者自身の体験に基づいたエッセイ作品と言われてます。
前半の陰鬱さや憤りが込み上げてきたところから、ラストでガラッと変わる清々しい展開が魅力です。
また、心理と重なるような情景描写が読者の心に鮮明に焼きつく作品。最後まで読んでみると、それまでの「小娘」の見た目や無遠慮なふるまいも含めて朗らかにさせられますね。
物語は終始「私」目線で進んでいきますが、まずは上記のような感じでざっくりポイントをまとめていきましょう!ここから、さらに場面の切り替わりをブロックごとに分けてみたり、作品における登場人物の役割、風景描写の意味についてさらに細かく書き出してみてもいいかもしれません。
そして、読み返しながらこのように物語の重要な部分や言葉を押さえて朗読するとより作品が活きてくるはずです。
- どんよりとした景色と重なる私の心
- けたたましい日和下駄(“晴天の日”に履く歯の低い下駄)の音
- 小娘について(顔立ち、服装、言動など)
- しっかりと握られた三等切符
- 小娘に対する私の感情
- 窓を開けるやりとり(滑稽な様)
- 隧道を抜けた先の貧しい町はずれの様子
- 蜜柑による心の変化
- しっかりと握られた三等切符
作品を通して何を伝えるかは人それぞれですが、僕の場合は、『蜜柑』を聞く人にあたたかい気持ちになってほしい感じます。
朗読をする際は、こうした点を大切にしながら、前後半のメリハリや情景と心理描写がリンクするように心がけて練習に取り組むと良いかもしれません。
また、個人的には、すべてを集約したようなこの一文がとても素敵なので『蜜柑』がお気に入りな理由でもあったりします。笑
が、私の心の上には、切ない程はっきりと、この光景が焼きつけられた。
というわけで、朗読をする際には以上のようなステップで作品を理解し、その良さ引き出すことを念頭に読み込んでいくと目的がはっきりするのでぜひ試してみてください!
朗読が上達する「実践方法」
続いて、実際に朗読をするにあたって気をつけてほしいポイントや上手くなるためのコツをご紹介していきます。
もちろん、なかには継続的なトレーニングを要するものもありますが、はじめて朗読をする方でも意識を少し変えるだけで朗読の印象がよくなる方法もあるので、ぜひ自分の気になるところからチェックしてみてください。
棒読みになる
おそらく多くの人が悩むのが「棒読み」ですよね。
実際に録音して聞いてみると想像以上に音がフラットになってるなんてことはよくあります。
実は、デジタル処理された音声というのはどうしても音の輪郭が削られてしまうため、録音や配信を目的に朗読する人は自分が思っている以上にニュアンスを入れないと味気ないものになっちゃうんです。
では、声に出して喋るときにどこを気をつけるべきかというと、それは「抑揚」と「語尾」であり、ここでは、抑揚とは「音の高低」、語尾とは「文末の音の扱い方」を指します。
抑揚
抑揚をつけるコツですが、まずは文章に対して「5W1H」を考えてみるのがおすすめです。
『私は、明日勉強のため書店へ本を買いに行きます。』
例えば、この文で「私は」の音を高くすると”誰が”行くのか?が強調されてわかりやすくなり、「本を」を強調すると “何を”買いに行くのかが明確に伝わりやすくなります。
こうした方法を「卓立法」と言い、音の高低だけでなくスピードやトーンを変えることでも強調でき棒読みから立体感のある表現に変わるはずです。
そして、抑える音はしっかり抑えるとさらに抑揚のメリハリもついてきますよ!
文章を読んでどこを強調すべきか?を絞って抑揚を使ってみてください。
- 私は:誰が?(Who)
- 明日:いつ?(When)
- 書店へ:どこに?(Where)
- 本を:何を?(What)
- 勉強のため:なぜ?(Why)
- 買いに行く:どのように?(How)
語尾
「〜しました。」「〜だった。」「〜である。」など、様々な語尾がありますが、ここでも音の扱い方が大切になってきます!
そして、たった少しの違いですが、この語尾のおさめ方で言葉の印象ってかなり変わってくるんです。
例えば、子どもが喋るときの語尾は音が下がらず「投げ放つ」ような音になりがちですよね。しかし、アナウンサーの場合ここを「〇〇しました⤵︎」とゆっくり丁寧に音を落として喋るのがわかると思います。
どちらが適しているかは文章や作品によりけりですが、基本的には丁寧におさめた方が朗読にまとまりが出くるので、こうしたプロの朗読や喋りを聞いて参考にするのもおすすめの方法です。
そして、もう一つがキャッチボールのイメージトレーニング。
一行一行朗読する際に、言葉の放物線をイメージしてみてください。
誰に、どれくらいの距離で、どんな言葉を伝えて、それが相手に届いて反応してくれたのか?までイメージです。
すると、自然と語尾に集中でき丁寧におさまりやすくなるはずです。最後まで意識を抜かずに届けるイメージで練習してみましょう!
- 言葉を届ける相手を具体的にイメージする
- 人、距離、強さ、表現、反応などイメージする
- 音の放物線をイメージし語尾をおさめる
会話はキャッチボールと言われるように、朗読も自分一人で行うものではなく相手がいて成立します。
この意識を持って練習するだけで、語尾だけでなく「読む」から「語る(話す)」朗読に少しずつ近づくのでぜひ実践してみてください!
声が暗い・弱い
「自分の朗読がなんだか暗い…」「声が弱々しい…」と感じる人もいるかもしれません。
特に、明るくアップテンポな作品を扱う場合は暗くて弱々しい声だとその印象が顕著になってきますよね。
そこで、トーンを明るくし声を出やすくするには「体の状態を変える」ことです。
- 頰の筋肉をニコッと上げる→下げるを繰り返す
- 朗読の際は口角を少し上げたまま喋る
- 30秒〜1分間軽くジャンプして体を温める
- 語尾に「!」や「ッ」を書いて朗読する
- 感情に沿って実際に体を動かして朗読してみる
声は体と連動しており声の印象を良くしたい場合、「顔で喋る」ことを意識してみましょう。
眉がクッと上がれば声に力が入りやすくなりますし、目を細めて柔らかい表情で話せば声も優しくあたたかくなるはず。表情を豊かにすることは聞き手を飽きさせないコツでもあるので、朗読をする際は「心→体→声の法則」を意識してみてください。
これらのコツ以外にも本格的なトレーニングで改善する方法を以下で紹介しているので、さらに良くしたい!と思う方はぜひ参考にしてみてくださいね!
滑舌が悪い
聞き取りやすい滑舌も朗読をする上で大切なポイントですよね。
滑舌練習といえば、口を大きく開けて「あ、え、い、う、え、お、あ、お」などがありますが、朗読の本番でもこんな感じで大きく口を開けてはかえってぎこちなく不自然です。
口を大きく開けての練習ももちろんアリですが、ちょっとありきたりだし効果的でないかもしれませんよね。
そこで、ここでは「唇」と「舌」を鍛えるトレーニングをご紹介していきます。
- ま行「まままま〜、みみみみ〜、むむむむ〜、めめめめ〜、もももも〜」
- ぱ行「ぱぱぱぱ〜、ぴぴぴぴ〜、ぷぷぷぷ〜、ぺぺぺぺ〜、ぽぽぽぽ〜」
- 口を開けて、舌を思いきり伸ばす→縮める(繰り返し)
- 口を開けて、真ん中→上→下→左→右に伸ばす(繰り返し)
滑舌は筋トレと似ていてすぐに良くなるものでもありませんが、それでもポイントを絞って練習することで効率的に苦手な言葉を克服できたりもするんです。
明瞭なほど聞いていて気持ちが良いですし、同じ言葉でも音がクリアなだけで印象も違ってくるので、気になる人はしっかりと取り組んでみましょう!
読み間違いを治したい
作品によって難しい漢字やカタカナが頻出しますが、そうした際の読み間違いを治したい人におすすめなのが「文章にチェックを入れる」こと。
例えば、カラーフリクションで記入すると黒文字との区別がつきやすいし、自分なりのルールを作って記号(マーク)を書いておくのも効果的です。
書き足しすぎてかえってわかりづらければ、自分自身で原稿を作り直すのもいいかもしれません。
- 色で区別をつける
- 記号を付け足す(抑揚、区切りなど)
- ふりがなを書く
- わかりにくい改行は、わかりやすくアレンジする
また、朗読の際は、緊張によりつい前のめりになって一つの文字に集中がち。そこで、原稿から少し離れて読んでみましょう。文章全体を俯瞰しながら捉えると不思議と読み間違いが減ったりするのでおすすめです!
こちらも、以下でさらに細かく解説しているのでぜひチェックしてみてくださいね。
一本調子になる
自分の朗読を聞いてみて「なんだか単調だなあ…」「変化がないなあ…」と感じる人も多いかもしれませんね。
そうしたときに、僕もよく「一本調子だね」と指摘されたことがあるんですが、どう治していいのかすごく悩んだ思い出がありました。笑
一本調子は「場面の切り替わり」「改行」「句読点」「区切り」などを意識できてないのが大きな原因だったりして、逆にここが良くなることで”活きた朗読”にかなり近づいてきます!
じゃあどうやって変化をつければいいの?ってことですが、ポイントは「呼吸」と「間」を使うこと。
呼吸
少し難しくて専門的なことですが、例えば、日常会話の中で「でもさ…」「だけどね?」なんて言葉を使いますよね?
このとき、頭の思考が切り替わるのと同時に、呼吸を「スッ」と入れて喋ることがあるはずです。
それにより、前の文章と比べてアクセントが付き、音の入り出しで少し音が高くなっているのがわかると思います。
もちろん、こうした切り替わりや区切り以外にも作品によって呼吸を入れるポイントは所々にあって、文章の呼吸を読むことは朗読に欠かせないものでもあります。
間
呼吸と同じく大切なのが「間」を使うことで、こちらも一本調子なテンポを変えるための効果的な方法です。
例えば、場面転換や緊迫したシーンではじっくり間をとることが多いし、改行や句読点でもワンクッション置いたりなど、実は文章のいたるところにこの「間」が出てきます。
呼吸や間は、頭で考えるよりも感覚的に身につけていくものだったりしますが、目安として「一拍(一呼吸)」や「半拍(半呼吸)」を基準に、文章の中にある間を入れるべきポイントを探しテンポに変化を加えてみてください。
作品を理解し、自分が思う呼吸や間で表現することも朗読の醍醐味の一つです!
表現力が足りない
抑揚と語尾、呼吸と間に加えて、さらに情感たっぷりで表現豊かな朗読を目指すなら想像力を磨いていきましょう。
以下は、想像力の引き出しを増やすおすすめのトレーニングですが、それぞれのお題を3パターン違う表現で言葉にしてみてください。
例えば、「街」なら賑やかな街なのか?静かな街なのか?
朝、夕方、あるいは夜なのか?
小さな駅前の商店街かもしれないし、都市部のオフィス街かもしれません。
こんな形で、自分が思う街を具体的に想像し「街」と声に出してみるとそれぞれ違ったニュアンスで表現できるはずです。
- 「街」
- 「透き通った青空」
- 「散りゆく落ち葉」
- 「日曜日の朝に響く話し声」
- 「うっとりするような黒い瞳」
- 「真夜中にドアをノックする音がした」
芥川龍之介の『蜜柑』でもこうした情景描写はたくさん描かれてますよね。
作品を読み込んだ上で、それはどんな景色なのかを具体的にイメージしながら口にしてみるとより深みのある世界観を表現できるはずです。
はじめはイメージに集中し過ぎて読み間違えたりしますが、頭で考えず、文章をゆっくり咀嚼しながら感じたままに声にしていくことを心がけてくださいね!
まとめ
- 作品を読み込んで理解しよう
- 作品を通して「伝えたいこと」と「魅力」を届けよう
- 棒読み:「抑揚」と「語尾」の扱い方を意識しよう
- 暗い・弱い:「体」と「表情」を動かそう
- 滑舌が悪い:「唇」と「舌」を鍛えよう
- 読み間違い:「アレンジ」を加えよう
- 一本調子:「呼吸」と「間」を意識しよう
- 表現力:言葉から具体的に「イメージ」しよう
今回は、これから朗読をはじめる人に知ってほしい読解のコツと上達のための改善トレーニングをご紹介しました!
ここで取り上げたポイントももちろん大事なのですが、「朗読」とは「朗(あき)らか」に「読(よ)む」の通り、読む際に迷いが生まれたり自信がなくてはそれが声に出て相手にも伝わってしまいます。
なので、どんな作品を朗読するにしても常に自信を持ってリラックスして伝えることを心がけてみてください!
それでは、お気に入りの作品を表現してみなさんなりの朗読を楽しんでくださいね!
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