テレビやネットに毎日触れていれば必ず耳にするのが「ナレーション」ですよね。
そんな、番組や広告CMなどでふと流れてくる”冒頭の声”に思わず聞き入ってしまったという人も多いのではないでしょうか?
現在、声優やナレーター志望者のなかにも、こうしたナレーションに憧れを持ったりもっと上達したいと思う人もいるかもしれません。
どんな原稿にもある”冒頭の一文”や”第一声”。
実はこれ、とても大事な要素であり、聞き手を引き込むうえでは欠かせないポイントだったりするんです。
そこで、今回はそんなナレーションの原稿読みで冒頭を上手く読むために気をつけるべきポイントをご紹介します。
オーディションや面接では第一印象が大事と言われますが、声の仕事を目指す上では「声の第一印象」も同じくらい重要なので、ぜひ意識して取り組んでみてくださいね。
「声の第一印象」の重要性
よく「人は見た目が9割」なんて言われますが、みなさんも初対面で誰かと会ったときはファーストコンタクトの情報をもとに「こんな人かな」という自分なりのイメージを付け足しますよね。
声も同じように、例えば知らない人から電話がかかってきた場合、そこから聞こえる声のトーンや喋り方といった「第一声」からどんな人なのかを想像し自分なりの人物像を作っているはずです。
もちろん、時間をかけてイメージが変わることもありますが、多くの応募が集まるテープ審査や原稿読みに限れば、その第一声で印象が決まってしまうなんてことも多いんです…。
身近なところで言えばネットの動画広告ですが、そもそも興味のないものや必要なものだけを見たいときって、できるだけ余計な時間や集中力は使いたくないですよね。
だからこそ、”聞いてもらう側”の僕らは、限られたチャンスを活かすためにも「声の第一印象」を磨いていくことで相手により聞いてもらいやすくなることができるわけです。
冒頭で気をつけるべき5つの注意点
それでは、以下で原稿読みの重要パートである冒頭部分の注意点を取り上げながら、より印象が良くなるテクニックまでをご紹介していきます。
これらが改善することで全体の原稿読みが安定するだけでなく、オーディションや審査など様々な場面で応用できるはずなので、ぜひ参考にしてみてください。
速さ
一つ目は読むスピードで、冒頭の語り出しのスピードが全体に影響していくことになります。
実は、原稿読みに慣れていない人の多くは緊張や日常的な喋り方のクセが残っているためにどうしても速く読む傾向があります。
何度も聞いていると自分ではあまり実感がないかもしれませんが、相手にとっては情報が何もないところからの第一声になるわけなので、しっかりと内容を伝えることが大切になってきます。
- 言葉が”流れない”よう丁寧に語る
- 自分のペースで喋らない
- 聞き手を意識しゆっくりめに入る
喋り出しの前は、文章が流れて聞こえないように一文一文を丁寧に落ち着いて読むことを心がけてみてください。
また、全体のスピードに比べて冒頭部分は気持ちゆっくりめに聞かせると相手が理解しやすいはずです。
特に、第一声では「どんな声(人)なのか?」「どんな内容なのか?」など、聞き手としては興味を傾けてくれるタイミングでもあるので、ここをしっかり聞いてもらうことが大切になってきます。
頭高(あたまだか)
頭高(あたまだか)と聞いてピンとこない人も多いかもしれませんが、これは日本語アクセントの一つで、言語の頭にくる第一音節を高く発音するアクセントになります。
正しく使えていれば問題ないのですが、冒頭で「頭高になってる」と指摘される場合、多くは本来のアクセント(平板・中高・尾高)とは違って頭高で発音してしまうケースです。
原稿読みに慣れてくると綺麗に読もうと頭の音を高くしがちですが、抑揚はあくまでアクセントに則った中で行うことが理想です。
- 抑揚をつけすぎない
- 本来のアクセントを意識
また、これとは逆にアクセントが下からもぐって入ってしまう人もよく見かけます。
抑揚や情感を意識しすぎると、冒頭から不自然に聞こえたり内容によっては余計な印象を与えてしまいかねません。
これらの傾向がある人は、最初は違和感がありますが、原稿を平板で読む棒読みトレーニングがおすすめで、自分自身のクセを認識・改善するのにとても役立ちます。
日本語アクセントのタイプや頭高については以下でも詳しく紹介しています。
声量
冒頭の第一声でいえば、声量にも注意したいところですよね。
聞き手からすれば、無音の状態からビックリするようなボリュームではじめられては引かれちゃいますし、逆に聞き取りにくいほど弱々しい声だと自信が無さそうに見えてしまいます。
- リラックス
- 読む前に不安や迷いを捨てる
- マイクとの距離を適度に保つ
先ほども触れたように、原稿読みに慣れないうちは緊張やこれまでに染み付いたクセとのたたかいでもあるので、読みはじめる前は、深呼吸をして肩の力を抜き、上手く読もうとしないことがコツになります。
また、マイクに向かって喋るのであれば、マイクとの距離、練習やリハーサルの感覚を覚えておくといいかもしれません。
一貫性
ナレーションの場合、基本的に”自分自身”として喋るものと、ある特定のキャラクターになって喋るキャラナレがほとんどだと思います。
そうした設定で喋るときに、例えば冒頭で暗かったナレーションが後半部分で人が変わったように明るくなると違和感がありますよね?
慣れないうちは難しいですが、文章量が多い原稿を扱う場合はとくに注意したいポイントで、冒頭の読み(声色、トーン、テンポなど)を維持しておく必要があります。
- 一貫したキャラクターを意識
- 読み進める前に”力配分”を考える
読み進めていくうちに声や音域が極端に変わったり、途中でエネルギー切れや集中力の欠如からトーンダウンしてしまうなど。
そうしたことのないように、はじめから終わりまで一定の喋りを維持できるようイメージしてから読みはじめることを心がけましょう。
つかみ
最後のポイントは”つかみ”で、よく漫才やトークでも”つかみ”が大事と言われるように、冒頭で相手の心を掴むことができるとその後も興味を持ってもらいやすくなります。
ここまで紹介した4つのポイントももちろん大事ですが、やはり一番重要なのは相手の心を掴む意識だと思います。
それじゃあ、ナレーションや原稿読みではどうすればよいか?ですが、わかりやすい文章だと、例えばこういったグルメ系のものですね。
①芳醇な香りの輝くスープ。 ②食べ応えのある中太麺。 ③柔らかく煮込んだ特製チャーシュー。 ④今月、東京・中目黒に店を構えたあるラーメン店が大人気なんです。
こんな感じでラーメン屋が紹介された文章なら、冒頭で聞き手に食べてみたいと思わせるように伝えなければいけません。
実際にそのラーメンを食べたことはなくても、似たような体験をしたときに感じた見た目・香り・食感といったイメージを膨らませると、ただ普通に喋るよりもはるかに言葉が生きてきますよね。
目の前にいる相手を想像し、「こんなに美味しい!」「絶対食べてほしい!」という思いを持って伝えることで相手の心を掴みやすくなりますし、①→②→③→④と徐々に盛り上げていくことで、聞き手の気持ちを高めやすく最後の”あるラーメン店”がより際立つはずです。
こちらは一例ですが、どんなシーンでも目的に沿って相手の興味を惹くことは、聞いてもらう上でとても大切なポイントになってきます。
まとめ
というわけで、今回は原稿読み上達のための冒頭5つの注意点をご紹介しました。
第一印象と同じように、第一声は聞き手の意識が最も向いているといってもいい絶好のタイミングだったりします。
普段、何気なく練習している人ほど、声を出す前に心を整えてどういった意図を持って聞かせるか?を考えることで相手により伝わりやすくなるのではないでしょうか?
練習の際は、家族や友人に聞いてもらうのもいいですし、ICレコーダーなどで聞き比べてみるのもいいかもしれませんね。
第一声が安定し磨かれることで、相手に「おっ!」と思ってもらえる一つの強みになるので、ぜひ意識して取り組んでみてください。
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