みなさんは、人前で何かしらの原稿を読むときにどんなことを考えていますか?
自分の伝えたいことを相手に届けるのは簡単なようで難しく、原稿を読み終わったあとに「あぁ、もっとこうしていれば良かったなぁ」とか「うまくできなかったなぁ」と落ち込むこともあるかもしれません。
僕自身、普段から主にナレーションの仕事をしていてそうした経験はこれまでに多々あるんですが、それでも何年かやってきた中で少しずつですが成長できたという自負があります。
そんな成功や失敗の過程で得ることのできた発見、過去に声優学校や養成所で学んだ経験などから、「相手に伝えるにはこうしたほうがいいな」という答えやヒントを知ることができました!
というわけで、ここでは朗読や原稿読みにおいて、上手く伝えるために実践すべき5つのポイントを自身の経験からご紹介していきます。
これらを実践することで、これまでの読み方が確実に改善されるのでぜひ参考にしてみてくださいね!
伝わらない原因は?
文章を読んでいてうまく伝えることができない理由はいくつかありますが、根本的な原因は「意識」にあると思います。
というのも、日常的な会話であれば誰でも普通に喋れていて、相手も自分も会話に合わせて自然体でコミュニケーションが取れているもの。
ですが、原稿が目の前にあり、たくさんの人の前となると、なぜかいつものようにはいきませんよね?
日常とは違った場面になればなるほど、緊張が増し、自分の内へ内へと意識が向いてしまうことでどこかテンポが速くなったり堅苦しい読みになってしまうんです…。
もちろん、スキルやテクニックなども大切ですが、伝えることの上手い人は必ずこの意識が伝えるべき相手に向いているため、結果的に相手に合わせた話し方ができるということです。
裏を返せば、いつものように「自然体で喋ること」が伝わる読みの第一歩になります!
伝えるための「5つのポイント」
原稿アレンジ
一つ目のポイントは、原稿にある文章に慣れること。
当たり前と思うかもしれないですがこれは結構大事なことで、本番で頼りになるのは原稿のみです。
何度も読んで慣れるのももちろんアリですが、内容によっては言い間違えや噛みやすい部分がどうしても出てきますよね。なおかつ本番ではプレッシャーもありさらにうまく喋ることが難しくなります…。
そこで、ただ読むのではなく原稿をできる限り読みやすくアレンジしていきましょう!
- チェックのペンは”赤・オレンジ”などわかりやすい色で統一
- 噛みやすい部分には”下線or波線”
- 難読の漢字・カタカナ等には”ひらがなのふりがな”
- 文の中途半端な切り替わりは”改行アレンジ”
あまり多く書き込みすぎるとかえってわかりにくくなるため、練習を重ねて「大丈夫!」と感じたチェック部分はなるべく消していくのがおすすめです。
誤読や噛みグセを感じるポイントがあると本番でもそこに意識が向いてしまい大きな障害になるので、できる限りわかりやすく読みやすい原稿へと改善してみてください!
こちらの記事では、さらに具体的な原稿チェック法を紹介してます。
内容を整理する
朗読でもスピーチでも一番大事なポイントになるのが、”自分自身が何を伝えたいか?”をはっきりさせておくことです。
例えば、日常会話で「今日こんな有名人を見たんだよね〜」と話すときに、嬉しかったのか?驚いたのか?自慢したいのか?によって同じ言葉でもニュアンスが変わってきますよね?
さらに、どんな場所で、どんな人を、どのように見たのか?など、日常会話では自然とその瞬間の様子をしっかりイメージすることができているはずです。
これを朗読や原稿読みに置き換えて、要旨を決め、内容を具体的に想像しながら伝えることで言葉のニュアンスが明確になります!
- “何を伝えたいか?”を明確にする
- 具体的にイメージして共感させる
ポイントごとに、先ほど紹介した原稿チェックの要領で「囲み」や「横線」を書き込んでおくと読む際にわかりやすくておすすめです!
姿勢を正す
姿勢を正すことは、一見すると”伝える”という目的から離れたことですが、声の通りが良くなり説得力が増すだけでなく、喉への負担も軽減されるなど様々なメリットがあります。
加えて、表情を明るくすることで自然と声のトーンも明るくなるなど印象アップにもつながるので、人前で喋る場合はとくに意識してほしいポイントです。
原稿を読む際は、以下の3つのポイントに注意しながら声に出してみてくださいね!
- 胸を開く
- 顎(あご)を下げる
- 口角を上げる
壁(かべ)を使った3分矯正トレーニング
こちらはおすすめの姿勢トレーニングですが、毎日3分ピタッとくっつけているだけで改善されていくのでぜひ試してみてください!
- 顎を引く
- 両足を肩幅程度に開く
- 後頭部をつける
- 肩甲骨をつける
- お尻をつける
- かかとをつける
“相手に合わせる”を意識する
実際に自分の原稿読みを聞いてみると気がつくかもしれませんが、ほとんどの人がスピードやテンポが速い場合があります。
聞き手のモチベーションが高いのであれば速くても構いませんが、実際そうでない場合がほとんどなので話に取り残されてしまうことになりますよね。
もう少し具体的に、谷川俊太郎さんの詩『ここ』を例に解説していきます。
ここ
どっかに行こうと私が言う
どこに行こうかとあなたが言う
ここもいいなと私が言う
ここでもいいねとあなたが言う
言ってるうちに日が暮れて
ここがどこかになっていく
出典:『女に』著:谷川俊太郎 出版:集英社文庫
- 原稿チェック
ここ どっかに行こうと/私が言う ○どこに行こうかと/あなたが言う ○ここもいいなと/私が言う ○ここでもいいねと/あなたが言う ○○言ってるうちに日が暮れて ○ここが○どこかになっていく ○=一拍(一呼吸) /=半拍(半呼吸) =スピードダウン
僕なりのチェックですが、このようにしっかり間をあることで「私」と「あなた」の会話がわかりやすくなり、「言ってるうちに日が暮れて」の時間経過も想像しやすくなるはずです。
また、ラストの「ここが」が強調されてゆっくり締めることができるので、文章にメリハリをつける意味でもスピードやテンポはとても大切になってきます。
夕暮れに二人が寄り添いながら話しているのをイメージすると、よりゆったりとした温かみある表現が生まれてくるかもしれませんね。
こうすることで、聞き手に理解し想像してもらう時間を作ることができるので、ぜひ聞き手や物語にあわせたスピード・テンポを心がけてみてください!
“キャッチボール”をイメージする
「原稿を持つとどうしても喋りが堅くなってしまう」「一本調子になってしまう」という方は多いかもしれません。
そんなときに実践してほしいのが、自分の声を思い描いて語りかけるように喋ることです。
よく「会話はキャッチボール」と言われるように、自分の放った言葉の放物線が相手の胸元にストンと届くのを心がけてみてください。
実際に、家族や友人に立って聞いてもらったりボイスレコーダーなどを置いてみるのもいいかもしれません。
柔らかい文章であれば優しく丁寧に、力強く届けたいのであればビシッと語尾を締めるイメージで。声が届いてないのであればもう少し大きくし、逆に、声に圧迫感や通り過ぎる感覚があれば小さく落とすイメージで語りかける感じです。
こうすることで、適切な距離感や強さが身につくだけでなく、語尾がおさまりやすくなり丁寧な印象を与えることができますし、以下のように細かい設定を決めておくと届けるべき言葉(ボール)がより明確になるはずです!
- どんな内容を伝えたいのか?
- どんな人に伝えたいのか?
- 伝えた人にどう感じてほしいか?
朗読入門におすすめのポイント
ここで紹介した内容も含めて、以下の記事では朗読を始める方におすすめの本の読み方から詳しい表現のポイントまでを解説しているのでこちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
まとめ
というわけで、今回は朗読・原稿読みに役立つ”伝え方”のポイントをご紹介しました。
伝え方が上手くなるだけで本番では作品の魅力がグッと増すだけでなく、今後様々な場面で応用できるスキルにもなりますよね。
ぜひ、これらのポイントをもとに自然体で語りかけること実践してみてください!
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