芸能人の労災適用問題について

トピック

昨今では、働き方の見直しや労働環境について話題になることも多いように、これまでにも様々な職種や現場で改善を求める声が上がってきました。

もちろん、芸能界においても同じようなことが言えると思いますが、特殊な環境だけになかなか難しいことでもあります。

そこで今回は、これに関係したトピックを紹介しながら、俳優・声優の「労災保険」について触れていこうと思います。

今後、こうした業界を目指す人にとって何かしらの参考になれば嬉しいです。

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労災保険の見直しを求める動き

2019年、俳優・西田敏行さんが理事長を務める日本俳優連合が、厚生労働省に対して「芸能実演家の労働者災害補償保険の適用」を求めて訴えました。

livedoor NEWS『俳優、声優らが「労災適用して」と記者会見 「特別加入」の拡大訴える』

労働基準法上、芸能関係の仕事に従事する人たちは「労働者」には当てはまらないことから、「特別加入」によって、任意で保険料を納められるよう制度の見直しをしてほしいという内容ですね。

しかし本来、労災保険は「日本国内で労働者として会社・事業主に雇用されて、賃金を受けている方」が対象となっていて、厚労省が示している芸能人の労働者性の判断基準では、以下の項目のいずれか1つでも満たしていない場合に限り労働者の扱いになるということです。

1.当人の提供する歌唱、演技等が基本的に他人によって代替できず、芸術性、人気等当人の個性が重要な要素となっていること。

2.当人に対する報酬は、稼働時間に応じて定められるものではないこと。

3.リハーサル、出演時間等スケジュールの関係から時間が制約されることはあっても、プロダクション等との関係では時間的に拘束されることはないこと。

4.契約形態が雇用契約でないこと。 

(S63.7.30 基収第355号)

一般的に、俳優や声優のほとんどが「個人事業主(フリーランス)」の扱いになりますが、その実態は労働者と変わりないものだったりします。

以前、NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも、声優の神谷浩史さんが「やっぱり僕らは日雇い労働者なので~」と仰っていたように、こうした業界ではタレントは”使われる立場”にあり、毎回異なる現場で肉体を使った様々な内容の仕事をします。

当然、競争の激しい世界なため、大多数は収入も不安定な人が多く、一つの仕事がとても貴重なものであり、個々が声を上げにくい立場であることもこれまで見直しがされなかった原因の一つかもしれません。

そして、体を壊せば仕事が成り立たなくなり、現場に復帰できてもそこから元の状態に戻っていける保証もなく、人気商売といえど、自分たちで仕事を作っていくことが難しいからこそ、現場の要求にいかに応えられるかが重要と考えられてきました。

制度の見直し

こうした法令の見直しを求める声により、2021年4月1日から、新たに労災保険の「特別加入」の対象が広がりました。

俳優・声優なども「芸能関係作業従事者」として任意で加入することが可能となり、様々なフリーランスが恩恵を受けられる制度となっています。

加入にあたっては、業務の実態、災害の危険性などが考慮されるため、一定の要件を満たす必要がありますが、今後、芸能界を目指す人にとっても明るいトピックだと思います。

まとめ

俳優・声優はとても魅力的な仕事であるものの、その反面、生活を成り立たせる上でとても困難な職業でもあります。

今後、そうした夢を目指す人たちが、改めて職業の特性や社会の変化について理解を深めることが、より良い未来を拓くためのきっかけになると思います。

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