『漁港の肉子ちゃん』
「なんかおもしろそうなタイトルだなあ〜」と思って読んでみたんですが、買ってよかったです。
西加奈子さんの作品はこれまで読んだことなかったし、これまでに完読を断念した本もあったりしたんですが、この本に関しては、おもしろくも心温まるストーリーに最後までページをめくることができました。
そして、何と言っても、明石家さんまさん企画・プロデュースにより映画化が決定したということで、この機会に原作を紹介しつつ作品の魅力と感想を書いていこうと思います。
感想を紹介するにあたって少しネタバレを含むので、気になる方は「感想・レビュー」の項目は飛ばしてご覧ください!
それでは、『漁港の肉子ちゃん』ってどんな作品なのか?、または、読んでみたい!と思う方はぜひ参考にしてみてくださいね!
『漁港の肉子ちゃん』とは?
書籍紹介
- 著者:西加奈子
- 出版:幻冬社
- ページ数:241p(文庫版)
- 発売:2011年8月31日
- 累計発行部数:35万部(2021年1月時点)
小説『サラバ!』『ふくわらい』で有名な直木賞作家・西加奈子さんが2011年8月に発表した、小さな港町を舞台に繰り広げられるハートフルコメディ。
日本海の架空の漁港を描いているものの、実はこれ、西さんが震災前に訪れた宮城県石巻市女川町がモデルとなっており、このときにあった1件の焼肉屋さんが頭から離れなかったのがきっかけだったそうです。
「いくら漁港で魚が美味しくたって、たまには焼き肉も食べたくなるわな」と語られていて、このお店に太った底抜けに明るい女性がいて、他にもあんな人やこんな人がいたらきっと楽しそう…!そんなイメージを膨らませてできた『漁港の肉子ちゃん』。
主人公・肉子ちゃんと娘のキクコを中心に、とにかく個性的な登場キャラクターが満載となっています!
簡単なあらすじ
男にだまされた母・肉子ちゃんと一緒に、流れ着いた北の町。肉子ちゃんは漁港の焼肉屋で働いている。太っていて不細工で、明るい―キクりんは、そんなお母さんが最近少し恥ずかしい。ちゃんとした大人なんて一人もいない。それでもみんな生きている。港町に生きる肉子ちゃん母娘と人々の息づかいを活き活きと描き、そっと勇気をくれる傑作。
出典:Amazon.co.jp
主な登場人物
漁港や商店街、学校に神社など、町の住人を中心にたくさんの人物が登場しますが、ここではキクコと深く関わる人物をざっくりご紹介していきます。
- 肉子(菊子)
キクコの母。焼肉屋「うをがし」で働きながら、店の裏にある小さな平屋でキクコと一緒に住んでいる。
- キクコ(喜久子)
小学5年生。肉子とともに北の港町に引っ越してきた女の子。
- サッサン(サスケ)
焼肉屋「うをがし」の店主。
- ゼンジ
漁業組合員。「うをがし」の常連。
- 金子
「PET SALON かねこ」の店主。「うをがし」の常連。
- マキ
「湯沢鍵店」の鍵師。キクコが憧れる大人の女性であり相談相手。
- マリア(真里亜)
キクコのクラスメイト。キクコとは対照的に裕福な家庭で育つ女の子。
- 二宮
キクコのクラスメイト。周りの同級生とは違う雰囲気を持った男の子。
感想・レビュー
冒頭でも書いた通り、個人的にはとても買ってよかったと思える一冊でした。
本編は325pくらいでさらっと読めるんですが、作品の魅力を大きく3つに分けて解説すると。
前半は、笑い要素満載。読者の心をしっかりつかみつつ、様々なエピソードから登場人物のキャラクターがわかりやすく描かれて。
中盤では、人間関係や思春期の葛藤など、ちょっとした変化から生じたキクコの悩み・弱みが徐々に鮮明化していく展開に。また、ときにダークでファンタジーな描写が、「生のあり方」を問いかけているようで作品に一層深みが出てます。
そして後半は、怒涛のように親子の過去に迫る形で胸が熱くなるし、このへんだけでもなかなかの読みごたえがあるはず!
残念な部分をあげるなら、最後の最後だけ、なんだか淡白だったなあ…と。それまでの展開から期待感をすごく抱いてしまっただけに。笑
とはいえ、この作品の魅力をものすごく高めているのは、終始キクコの視点で語られているところだと思うんです。
ドライかつ繊細なツッコミは、肉子をより”関西のおもろいおばちゃん”にしているし(笑)、子どもらしくない達観した思考は、周りのクラスメイトとは違うカラーで、徐々にキクコ自身も変わった人間に思えてくるんですよね。
なおかつ、この町に引っ越してきた人物なので、フラットに物事を見ているのも読者目線でわかりやすいなと感じました。
こんな感じで、キクコのモノローグの世界をときに共感しつつ驚かされつつ追っていくんですが、文章も読みやすいので読書が苦手という方にもおすすめしたい笑えて心温まる一冊です!
ストーリーに触れすぎてもいけないので、ここから先はぜひ原作で楽しんでください!笑
映画トピックス
先日アナウンスされた映画についてですが、こちらは2021年初夏公開予定となってます。
企画・プロデュースに明石家さんまさん。
監督に映画『ドラえもんシリーズ』を手がけた渡辺歩さん。
そして、キャストには『鬼滅の刃』竃門炭治郎役で有名な声優・花江夏樹さんの参加が決定!
また、すでにメディア等でマリア役を決める声優オーディションの募集も公開されています。今後の追加トピックスも注目ですね!
まとめ
というわけで、今回は小説『漁港の肉子ちゃん』の感想・レビューについてご紹介しました。
「親子のかたちは何なのか?」「生きてていいのか?」
誰もが一度は感じるそんな疑問に、深く優しく応えてくれる一冊なのではないかと思います。
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